digress

ソノマ・コーストの真実

ソノマ・コーストの真実

「トゥルー(真の)・ソノマ・コースト」

ソノマ・コーストAVAは1987年に制定されましたが、政治的事情により、寒冷な地域から温暖な地域までの広範囲に区分されてしまったのです。

今回ご紹介するのは、「トゥルー(真の)・ソノマ・コースト」。
太平洋岸から東内陸10kmほど、そして北のメンドシーノ境界線からルシアン・リヴァー・ヴァレー辺りまでの、非常に寒冷な地域です。
ソノマ・コーストの拠点となるヒールズバーグから北へ車を飛ばして2-3時間。海岸沿いにはアシカだらけ。寒風強く、真夏でもダウンジャケットが欠かせません。
寒風吹きすさぶ海岸線から険しい林道を進むこと小1時間。人が住んでいる気配すらない秘境中の秘境へ。IT最先端を行くアメリカ本土ながら、既に携帯電波が届かない。
やっと、標高400mほどのリッジ(尾根)に到着しても、実に肌寒い。遠景に白波立つ太平洋を眼下に、海から山の斜面を伝わって登ってくる風の冷たいこと。
真夏の最高気温も25℃程度で、春秋の降雨。朝晩はの冷え込みは厳しく、ブドウにとっても厳しい環境です。

だが、ブルゴーニュに足繁く通う者にとって、実に環境が似ているではないか。
こんな過酷な環境のリッジを開墾して、究極のピノ・ノワールを目指して、D.R.C.クローンやポマール系ディジョン・クローンを植樹し、アメリカンドリームを追いかけているのです。

事実、既に名声を確立しつつある醸造家たちのワインを体験すると、誰も衝撃を受けるのです。アメリカワインを良く知る者でさえ、未だかつてない稲妻が身体中を駆け巡り、体内に留まります。

濃密で、凝縮果実の塊、コンコンと湧き上がるジューシーなアロマ、心地よい酸味も感じ取れます。口蓋では、決して重みを感じさせず、きめ細かくボリューム感のあるタンニン。凛として張りのある自然な酸味と骨格。肉付きも良く、見事にバランスの取れたワイン・・

このクオリティーでこの価格。2015年ヴィンテージ以降、非常に高額になってしまったコート・ド・ニュイやボーヌをこれからも追い求める必要があるのだろうか。

ビジネスならまだしも、上質なピノを堪能するならばトゥルー・ソノマ・コーストに限る、という想いを持つ賢者が増えるであろう。

凝縮しているが酸が無く、濃縮ジャムのように甘くぼんやりとした多くのカリフォルニアワイン。これらを全否定するかのようなソノマ・コースト。

全米一予約の取れないレストラン、「フレンチ・ランドリー」はおろか、一つ星の「コモンウェルス」「マイケル・ミーナ」「オクタヴィア」「ザ・プログレス」等や、和食系高級レストランでも、今や一番売れる赤ワインはピノ・ノワール。

至近にあるシリコンバレー辺りに勤務する若いリッチマン等は挙ってピノ・ノワールばかりを飲んでいます。

カリフォルニアは今や、世界有数のオーガニック大国。野菜やキノコ類はもちろん、魚貝類や肉類に至ってもすべてオーガニック。日本からの輸入食材も多く、素材が持つ本来の特長を生かしたメニューばかり。そうでないと、上質な顧客が寄ってこないそう。彼らが飲むのは、必然的に素材感を活かした料理に合わせることとなり、ソムリエやシェフがきっぱりと断言するのです。

「ピノ・ノワールで決まり!」


Top